アンバランスな愛情
「あ、申し訳ありません
お時間をおかけして」

「いえ、俺の疑いが
はれてよかったです

共犯者にされるんじゃないかって
冷や冷やしてました」

「あはは!
私も共犯者だったら困るって
思ってました」

山田さんは気さくな人だ
冗談も通じる

俺は山田さんにお辞儀をすると
取り調べ室を出た

山田さんが俺の前を歩き
刑事課の出入り口まで
案内してくれた

『相談室』と
書かれている室内に
男と一緒に座っているスミレの姿が
見えた

スミレ?

俺は
相談室の中を見ようとすると
山田さんが
さっと視界を遮った

「すみません
被害者の御顔をお見せするわけには…」

「そうですよね
失礼します」

俺は警察を出た

相談室にいたのは
本当に
スミレだったのか

似ている女性だっただけか

俺は
携帯を取り出すと
スミレに電話をするが

スミレが出ることはなかった
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