アンバランスな愛情
「これから社長と打ち合わせがあるの
夕食はいらなから」

桜さんが洗面所から大きな声を出した

出かける?

俺はワイシャツを脱いで
上半身裸のまま
洗面所に洗い物を持って行った

「急だね」

「そうかしら?
一日でも早く開店させたいから」

化粧をなおして
髪を整えた桜さんは

赤いスーツを着て
家を出て行った

俺はジャージを着てサンダルを
はいて
共同廊下に出た

黒い車が見えた

桜さんが
手を振って車に乗り込む

俺が上から見ているなんて
気づきもせず

満面の笑みで
男が待っている車に乗り込んだ

俺はそのまま煙草を吸う

そして携帯を手に取ると
スミレに電話をした

「瑛ちゃん?」

「マコは帰ってきた?」

「ううん、まだ」

「話はしたが…
俺の話を素直に受け取ったか…は
不明だ」

「ありがとう
瑛ちゃんは電話して平気なの」

「ああ
桜さんは出かけたよ」

「そうなんだ」

スミレの声に元気がないように感じた

「今から行っていいか?」

「え?」

「スミレを抱きたい」

「お姉ちゃんが帰ってきたらどうするの?」

「じゃ、俺の実家で」

「瑛ちゃんの部屋で待ってる」

「すぐに行くから」

俺は電話をきると
一度部屋に戻って

荷物を持つとすぐに出かけた
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