アンバランスな愛情
「僕の好きな人
先生のこと
好きみたいなんだ」

「あ~
階段でいちゃついてた女子生徒か?」

「覚えてました?」

覚えているも何も
スミレだったからな

この相談
のりたくない

俺以外の男にいる
スミレの顔を俺は知りたくない

「名前も知ってるでしょ?
知らないふりしなくても
いいですよ」

杉田はにっこりとほほ笑んだ
でも
目が鋭い

何か嫌な予感がする

「名前?」

「だって放課後
友人と一緒に
先生のところに
遊びにきてるじゃん

名前くらい
覚えているでしょ」

そういうことか

「橘さんで合ってるかな?」

「先生から見て
彼女はどう思う?」

「生徒だけど」

「一人の男としては?」

「俺に聞いてどうするの?

生徒一人ひとりに
男の目で見てたら
保健医なんて勤まらないけど」

「それ本心?」

「どうして?」

「質問しているのは
僕ですけど」

「本心だ」

杉田は笑顔を見せた
今度は目も
笑っている

杉田は席を立った

「安心しました
これで
失礼します」

杉田は頭を下げると
保健室を出て行った

結局
おにぎりを食べられず

午後の授業の鐘が鳴った

…って俺にはあまり関係ないが
教室に戻る生徒の足音を聞きながら
俺は遅い昼食をとった
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