舞い踊る炎使い
盗まれたアクセサリー
「火神よ、舞い踊れ。炎天の舞(えんてんのまい)!!」
自分自身を炎に包み、加速したまま次々と悪霊を倒していく登校中。俺は技の時間切れで、減速して止まる。
まだ悪霊の気配がある……どこにいる……?
「……っ!」
不意に頬に痛みが走った。痛むところを押さえると、傷が出来ているのが分かる。感覚的に、切り傷か……。
悪霊が、俺の目の前に現れた。俺は、傷を気にすることなく刀を構える。
「……炎よ、舞い上がれ。火だるま」
いつものように悪霊を倒し、刀を髪飾りに変えてカバンに突っ込むと、学校に向かって歩き始めた。
教室に行く前に保健室に寄り(先生には、能力のことを話してある)、教室のドアを開けて、「すみません。遅れました」と言う。
……いつも通りの時間に出たのに、遅刻してしまった……。
「珍しいね。不知火が遅刻するなんて……」
同じクラスメイトの子が、口を開いた。……確かに、悪霊を倒しながら登校してんのに、遅刻したことはねぇな。
そんなことを思いながら、俺は席に着く。その時、チャイムが鳴った。……授業が終わった……俺、そんなに悪霊と戦ってたのか?
とりあえず礼をして、俺はカバンから荷物を取り出して机の中に片付け始める。
「ねぇ、不知火」
誰かに話しかけられ、顔を上げた。クラスメイトの1人、村雨 紡(むらさめ つむぐ)だ。
「何だ?」