舞い踊る炎使い
あれから数日。あの日から、紡は俺に話しかけてくるようになった。もちろん、煌矢には紡のことを話してある。
今は、昼休み。俺と煌矢と紡で話をしていた。
「……燐、煌矢」
紡は、俺の名前を呼んだ。あの日以来、紡は俺と煌矢を下の名前で呼ぶように。
「ん?」
「……ありがとね」
ボソリと紡が呟く。俺と煌矢は、顔を見合せた。
「何か感謝されるようなこと、したかな?」
紡に顔を向け、煌矢は言う。
「僕、この高校に友達がいなくて……中学の時はいたけど。だから、こうやって話をしてくれて嬉しいな……って」
紡は、満面の笑みを浮かべた。俺と煌矢は、同時に笑う。
その時、誰かの視線を感じて顔を上げる。だけど、誰も俺らを見ていなかった。
……何だったんだ?さっきの視線……。
俺は気のせいか、と言い聞かせ、煌矢と紡と再び会話を始めた。
……やっぱり、おかしい……。
最近、誰かから視線を感じるようになった。今は、視線なんて感じないけどな。
俺は、紡と煌矢と並んで移動教室から教室に戻る。やっと昼食の時間だ。
俺は荷物をロッカーにしまって、弁当と水筒を取り出そうとカバンを開ける。
……ん?あれ?
カバンから、弁当と水筒を取り出して気が付いた。
「……あれ?」
思わず声に出し、カバンを漁る。いやいや、嘘……だろ?