二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 煙草の残り香がする。

 ページをめくる指先はほっそりしていて、爪の形まで整っている。

 知らない男の人の間近にすわるのは初めてで夏瑛はどぎまぎした。

 本を眺めるどころではなく、その指先ばかり見つめていた。

 自分のことを理解してくれる人に出会えた。

 この人なら、夏瑛が好きなものを〝気持ち悪い〟なんて、きっと言わないだろう。

「夏瑛ちゃん、気をつけろよ。こいつ、仲間うちではペドフィリアかゲイかって噂されてるんだぞ。女の子に興味しめさないから」

「ペド、フィリア?」

「わかんないか。じゃあ、夏瑛ちゃん、ロリコンって知ってるかな?」

「ロリコンなら聞いたことあるけど」

「また、そんなこと言って。ミッキーは靭也ばっかりもてるからやっかんでるんでしょ。われらがアドニスに」理恵も加わる。

「ええっ、おまえも靭也推しなのぉ? 信じてたのに、理恵ちゃんは他のやつらとは違うって」

「もう。小学生に悪影響与えちゃうでしょ、変なことばっかり言ってると」

「そうそう、うちの大事な夏瑛をおまえらの毒で汚さないでくれよ」

 叔父も横やりをいれてきた。

「おまえらって、先生、わたしとミッキーを一緒にしないでくださいよぉ」
 
 理恵がすかさず文句を言う。
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