二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 翌日、夏瑛は図書館に行った。

 夏休みの図書館は混んでいる。

 宿題をするとの名目で、友だちとおしゃべりに興じている小学生や中学生、閲覧席を占領して勉強に励む受験生、ソファーで居眠りをしている年配の男性など、人の行き来が絶えない。

 夏瑛は、成人用書棚がならぶ奥のスペースにはじめて足を踏みいれた。

 カビくさい、古びた匂いが満ちている。

「ええと……ナ、ナは」

 検索用のコンピューターで場所はだいたい把握していた。

 外国文学が並んでいる棚の、本の背を端から順に目で追っていく。

「あった」

 お目当てはウラジーミル・ナボコフの『ロリータ』。

 いつも夏瑛が借りる、表紙にイラストが描かれた子ども向けの本とは見た目がぜんぜん違う。

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