二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 手続きを終え、そそくさと出口に向かう。

 図書館のすぐ外にある、木陰のベンチに座り、さっそく『ロリータ』を紐解いた。

 気温は33度、一瞬で額に汗がにじむほど暑い。

 でも、図書館の中で読むと友だちに会いそうだし「なに、読んでるのぉ」とのぞいてきそうな気がしたので、我慢した。

 まず、いつも読んでいる本とは、字の細かさが違った。

 それに漢字も難しい。

 何が書いてあるのか、意味もさっぱりわからない。

 はじめのページでギブアップした。

 自分でも何をやってるんだろうと思う。

 でも、昨日からずっと気持ちがもやもやして、何かしていなければ落ち着かない気分だったのだ。

 パソコンで映画版『ロリータ』の予告編も見た。

 主人公に愛される12歳の少女はかわいかったが、自分も負けている気はしない。

 図書館の入り口のガラス扉に映った少女は、映画に出てきた少女のように、手足が長く、大人でも子どもでもない、魅惑的な生き物に見える。
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