二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 靭也がゲイじゃなくて、ペド……何とかなら、自分に好意を抱いてもらえるかもしれない。

 本当にそうだったらいいのに。


 その後、運よく、靭也と顔を合わせることが数回あった。

 友だちと一緒に来ているときも、ひとりのときもあった。

 親しげに声をかけてくれたが、それ以上のことはもちろん何もなかった。

 夏瑛が長い脚を強調するためにショートパンツ姿で靭也の前にあらわれても、予告編の少女のように上目使いで見つめてみても、とくに反応はなかった。

 それでも、ふたりの距離は少しずつ近づいていた。

 靭也は〝夏瑛〟と呼び捨てするようになり、夏瑛は〝靭【ゆき】にいちゃん〟と呼ぶようになった。
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