二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 夏休みも終わりに近いある日の午後。

 裏の林から、蜩【ひぐらし】が川のせせらぎのように鳴く声が聞こえてくる。

 本を読んでいるうちに、夏瑛は眠気を感じて、ソファーでうとうとしていた。

 ダイニングテーブルでは、靭也と貴子がふたりで話をしている。

 寝ぼけて目を閉じたままぼんやりしていると、「おーい、貴子」とアトリエのほうから叔父の声が聞こえた。

 「はーい」と答えながら、貴子はふたりのコーヒーカップを片づけようとしたが、靭也は「やっておきますよ」と言ってさえぎった。

 「じゃあ、お願いするわね」そう答えると、貴子は奥に入っていった。
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