二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 気づくと、吸い寄せられるように自分の唇を靭也の唇に重ねていた。

 靭也はゆっくりと目を開け、つぶやいた。

「こら……寝込み、襲うな」

 我に返って夏瑛はぱっと靭也から離れた。そして

「……ごめんなさい」と目をそらして言った。

 靭也は起き上がり、正面から夏瑛を見つめた。

「夏瑛のことは大事だし、嫌いな訳じゃないよ。だけど、いー」

「その先は言わないで! もう、知ってるから!」

 耳を塞ぎ、夏瑛は大きな声で靭也の言葉を遮った。

 涙がこみ上げてくる。
 
 でも、涙は見せたくなかったから必死でこらえた。

 ここで泣いたら、あまりにもみじめすぎる。
 
 妹みたいなもの――
 
 靭也はそう、言いたかったのだろう。

 でも、この期に及んで念を押されるのはつらすぎる。

 

 人生ではじめての口づけは、カカオ80パーセントのチョコレートよりも苦かった。

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