二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 いつもなら坂を上がって叔父の家が見えてくるとうきうきするのに、今日は沈んだ気持ちのままだ。

 自転車のペダルが重たい。

 蝉が羽化したあの木は見たくなかったので、いつもと反対側に自転車を止めた。

「こんにちは」

「あら、いらっしゃい」奥から、旅行で少し日焼けした叔母がいつものように迎えてくれる。

「さっきまで靭也くんいたのよ。残念ね。会えなくて。今日が公募審査の搬入日なの」と言われ、夏瑛はほっと胸をなでおろした。

「夏瑛、久しぶりだね。少し痩せたかな?」叔父にそう言われた。

「夏風邪が長引いて、あんまり食欲もなかったから」
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