二度目のキスは蜂蜜のように甘く蕩けて
 この家は戦前からこの場所に建っていたようだ。

 十数年前に家主が亡くなり、廃屋寸前に荒れ果てていたものを叔父が購入した。

 長い年月をかけ、少しずつ補修し、元の瀟洒な姿に戻した。

 「おう、毎日、出勤。ご苦労、ご苦労」
 浴衣を着流した叔父がやってきて、夏瑛のサイダーを一口飲む。

「叔父さん、それ、わたしの」少しすねた顔で文句をいうと、

「はっはっは」と豪快に笑いながらソファーに腰かけた。

 大学教授なので、夏休み中は在宅していることが多かった。

「夏瑛も大学勤めをしたら、ばあさんになるまで夏休みを満喫できるぞ」
 いつもそんなことを口にしていた。ほがらかな人だった。

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