ビビってません! 〜あなたの笑顔は私の笑顔〜
第32話〜オーラ
「ここだ。」
十数分歩いてたどり着いたのは高層マンションだった。
「誰かの…お宅ですか…?」
「安心しろ。きっと喜ぶ。」
「んー…?」
エントランスを入る。航は部屋の番号を入力した。どきどきする百合。
「こんにちは、航です。」
奥の自動ドアが開いた。
「行くぞ。」
航はずっとにこやかだった。百合は少し緊張しながら航についていった。エレベーターでその階へ。そしてひとつのドアの前に航は立った。表札には『野田』。インターホンのボタンを押す。するとすぐに勢いよくドアが開いた。百合は航の背中に隠れる。
「いらっしゃい!待ってたわ!入って入って!」
「お邪魔します。」
百合に聞き覚えのある声、テンション。航の背中から少し顔を覗いた。
「まあ!ユリ!ユリじゃない!」
「と、友江先輩?!」
「とにかくふたりとも早く入って!」
突然のことで、驚く百合。しかし友江のテンションの高さ、百合に驚く暇はなかった。友江は百合にハグをする。
「ユリー!会えて嬉しいわー!」
「はい、私も…。でも、びっくりしました…。」
二人を微笑ましく見ながら、航は挨拶をする。
「お久しぶりです、友江さん。」
友江は航に笑顔を向ける。
「久し振りね、航くん。元気だった?」
「はい、おかげ様で。友江さんは?」
「私はいつだって元気よ!」
奥から友江の夫、浩司が来てふたりを出迎える。
「よく来てくれたね。それから式も来てくれて、ありがとう。」
「いえ、とんでもないことです。野田さんもお元気そうで、よかったです。」
百合は野田を見るのは二回目。やはりとても優しそうな人だった。裏表などない、純粋な人なのだろうと。ぼんやり見ていた百合はハッとし、慌てて挨拶をする。
「は、初めまして。降谷百合です。友江先輩には大変お世話になりました。」
ぺこっと頭を下げる百合。百合に野田は言う。
「初めまして。可愛らしい子だね。2人とも、どうぞ座って。」
「その前に…。」
航は持っていた紙袋を友江に渡した。
「友江さん、どうぞ。」
「え?何?わざわざ、何も要らないのに…悪いじゃない!」
「気持ちなので、受け取ってください。」
「…そーお?じゃあ…ありがたく、いただくわね。ありがとう。」
「いえ。開けてみてもらっていいですか?」
「え?いいの?」
「はい、お願いします。」
友江が袋から出したものは風呂敷に包まれていた。結び目をほどくと木箱が。ふたをそっと開けた。
「まあ…江戸切子じゃない!…素敵…、こんなに綺麗なのね…。」
「友江さん、もう持ってるんじゃないかって心配だったんです。」
「ううん、持ってない。欲しくなったらいつでも買えるからって、持ってなかったの。」
「よかった…。友江さん、確かビール、好きでしたよね。だから一口ビールのグラスより大きいグラス選びました。それで野田さんと一緒に飲んでください。」
「やだわ!そんなこと覚えてなくていいのに!でも、大切に使わせてもわうわ。ありがとう、航くん。」
4人、席に着く。友江お手製の豪華なご馳走がテーブルに用意されていた。パチパチするシャンパン、4人は乾杯をした。会話が弾む中、少々ぎくしゃくする百合に、友江夫妻は優しかった。優しく話し掛けてくる。もちろん航もやさしかった。嬉しい百合。にこにこ笑う。
友江が席を外すと、その向こうに見えた風景。高層マンションから見える景色はきれいだった。百合は思わず言う。
「うわぁ、きれい…。」
「ベランダ、出てみるかい?」
野田が笑顔で聞いてきた。百合も笑顔で答える。
「いいんですか?」
「もちろん。こっちへ。」
百合は野田についていく。ベランダに出て、野田の話を百合は楽しそうに聞いていた。
友江が戻ってくる。友江は航に話し出す。
「あなた達、うまくいってるみたいね。」
「…なんでそう思うんすか?」
「見ればわかる。あの子の表情。いい顔してる。あんなふうに明るく笑う子だったのね、知らなかったわ。」
「確かに…前よりよく笑うようにはなりましたけど…。」
「それから、オーラ。」
「オーラ?友江さん、見えるんすか?」
航は笑う。友江は真剣だった。
「見える。見えるのよ。あの子から、やわらかい光が出てる。航くん、あなたからもね。」
「オレっすか??」
「そうよ、同じ光がね。だから、何かあったらその光で、あの子を包んであげてちょうだい。」
「包むって…。」
「大人しい子ほど、何かを抱え込む。」
航の胸に刺さる言葉。
「あいつは何も…。」
言いかけた航は思い出す。
「そういえば…あいつこの前、過呼吸になったんです。」
「過呼吸?あの子が?」
「はい。」
「過呼吸だなんて…。私の知る限り…あの子のそんな話、聞いたこともない…。過呼吸っていったら…、極度な不安、緊張、ストレス、恐怖…。何か思い当たること、ない?」
航はベランダにいる百合を見る。無邪気に笑っていた。その航を見て友江は言う。
「あの子のこと、お願いね。」
十数分歩いてたどり着いたのは高層マンションだった。
「誰かの…お宅ですか…?」
「安心しろ。きっと喜ぶ。」
「んー…?」
エントランスを入る。航は部屋の番号を入力した。どきどきする百合。
「こんにちは、航です。」
奥の自動ドアが開いた。
「行くぞ。」
航はずっとにこやかだった。百合は少し緊張しながら航についていった。エレベーターでその階へ。そしてひとつのドアの前に航は立った。表札には『野田』。インターホンのボタンを押す。するとすぐに勢いよくドアが開いた。百合は航の背中に隠れる。
「いらっしゃい!待ってたわ!入って入って!」
「お邪魔します。」
百合に聞き覚えのある声、テンション。航の背中から少し顔を覗いた。
「まあ!ユリ!ユリじゃない!」
「と、友江先輩?!」
「とにかくふたりとも早く入って!」
突然のことで、驚く百合。しかし友江のテンションの高さ、百合に驚く暇はなかった。友江は百合にハグをする。
「ユリー!会えて嬉しいわー!」
「はい、私も…。でも、びっくりしました…。」
二人を微笑ましく見ながら、航は挨拶をする。
「お久しぶりです、友江さん。」
友江は航に笑顔を向ける。
「久し振りね、航くん。元気だった?」
「はい、おかげ様で。友江さんは?」
「私はいつだって元気よ!」
奥から友江の夫、浩司が来てふたりを出迎える。
「よく来てくれたね。それから式も来てくれて、ありがとう。」
「いえ、とんでもないことです。野田さんもお元気そうで、よかったです。」
百合は野田を見るのは二回目。やはりとても優しそうな人だった。裏表などない、純粋な人なのだろうと。ぼんやり見ていた百合はハッとし、慌てて挨拶をする。
「は、初めまして。降谷百合です。友江先輩には大変お世話になりました。」
ぺこっと頭を下げる百合。百合に野田は言う。
「初めまして。可愛らしい子だね。2人とも、どうぞ座って。」
「その前に…。」
航は持っていた紙袋を友江に渡した。
「友江さん、どうぞ。」
「え?何?わざわざ、何も要らないのに…悪いじゃない!」
「気持ちなので、受け取ってください。」
「…そーお?じゃあ…ありがたく、いただくわね。ありがとう。」
「いえ。開けてみてもらっていいですか?」
「え?いいの?」
「はい、お願いします。」
友江が袋から出したものは風呂敷に包まれていた。結び目をほどくと木箱が。ふたをそっと開けた。
「まあ…江戸切子じゃない!…素敵…、こんなに綺麗なのね…。」
「友江さん、もう持ってるんじゃないかって心配だったんです。」
「ううん、持ってない。欲しくなったらいつでも買えるからって、持ってなかったの。」
「よかった…。友江さん、確かビール、好きでしたよね。だから一口ビールのグラスより大きいグラス選びました。それで野田さんと一緒に飲んでください。」
「やだわ!そんなこと覚えてなくていいのに!でも、大切に使わせてもわうわ。ありがとう、航くん。」
4人、席に着く。友江お手製の豪華なご馳走がテーブルに用意されていた。パチパチするシャンパン、4人は乾杯をした。会話が弾む中、少々ぎくしゃくする百合に、友江夫妻は優しかった。優しく話し掛けてくる。もちろん航もやさしかった。嬉しい百合。にこにこ笑う。
友江が席を外すと、その向こうに見えた風景。高層マンションから見える景色はきれいだった。百合は思わず言う。
「うわぁ、きれい…。」
「ベランダ、出てみるかい?」
野田が笑顔で聞いてきた。百合も笑顔で答える。
「いいんですか?」
「もちろん。こっちへ。」
百合は野田についていく。ベランダに出て、野田の話を百合は楽しそうに聞いていた。
友江が戻ってくる。友江は航に話し出す。
「あなた達、うまくいってるみたいね。」
「…なんでそう思うんすか?」
「見ればわかる。あの子の表情。いい顔してる。あんなふうに明るく笑う子だったのね、知らなかったわ。」
「確かに…前よりよく笑うようにはなりましたけど…。」
「それから、オーラ。」
「オーラ?友江さん、見えるんすか?」
航は笑う。友江は真剣だった。
「見える。見えるのよ。あの子から、やわらかい光が出てる。航くん、あなたからもね。」
「オレっすか??」
「そうよ、同じ光がね。だから、何かあったらその光で、あの子を包んであげてちょうだい。」
「包むって…。」
「大人しい子ほど、何かを抱え込む。」
航の胸に刺さる言葉。
「あいつは何も…。」
言いかけた航は思い出す。
「そういえば…あいつこの前、過呼吸になったんです。」
「過呼吸?あの子が?」
「はい。」
「過呼吸だなんて…。私の知る限り…あの子のそんな話、聞いたこともない…。過呼吸っていったら…、極度な不安、緊張、ストレス、恐怖…。何か思い当たること、ない?」
航はベランダにいる百合を見る。無邪気に笑っていた。その航を見て友江は言う。
「あの子のこと、お願いね。」