ビビってません! 〜あなたの笑顔は私の笑顔〜
第37話〜お守り
食事が終わった後、百合は急いでテーブルを片付ける。自分が開ける前に、航が開けてしまっていた、おもちゃ箱。
「待ってください、私が開けます!」
航は百合の言うことに耳をかたむけない。
「あーこの部屋、本棚ねぇんだよな…。まぁいっか。」
「航さん、待ってください!一緒に開けます!」
百合が駆けつける。航のがらくた箱、百合のおもちゃ箱。航はどんどん中身を出す。言った通り、マンガ本と雑誌が入っていた。本棚、それに代用できるものがない部屋。航はそれらを床に置き、重ねていく。
「うわぁ…これが航さんの…。」
「感心すんな。大したもんじゃねーよ。」
航の物が自分の部屋の中。そう思うだけで百合は嬉しく、目を輝かせていた。
「長い間、押し入れの中に入ってて…、一応ほこりは払ってきた。…おい、聞いてるか?」
「…はい、聞いてます…。」
百合は目が離せない。嬉しそうな百合を見て、航はほっとする。こんな物で、百合の寂しさが少しでも紛らわせるのならと。本当に持ってきてよかったと。
「暇な時、気が向いたら読んでみろ。面白いぞ。」
「いいんですか?」
「安心しろ、エロいのもグロいのもない。」
「エロ…グロ…。」
「次はCDだな。あとは適当に…また押し入れ見てみるか。」
百合はマンガ本を一冊、手に取ってみる。
「航さん?」
「ん?」
「…ありがとう…。」
航は何も言わず、百合の頭をなでた。その後、自分の特等席に座る。百合はマンガ本の横の雑誌を見る。
「この雑誌を見れば、航さんがどういう服を着てたか、わかるんですね。」
「そういう訳じゃねーけど、好きで買ってた。あ…服、古いスニーカーも…。これじゃきりがねぇな。」
「きりがなくていいです。この部屋、航さんでいっぱいにしたい…。」
航に背を向けて座っている百合。百合は悲しい背中をしていた。きっと顔も悲しいのだろうと、航は思った。そして百合は思い出す。
「そうだ、航さんに…。」
百合は引き出しから出す、作ったミサンガ。百合は航の隣に座る。
「これを、航さんに…。」
「なんだ?これ。」
「ミサンガです。お守りです。」
「お守り?」
「はい。自然に切れると願いが叶うって言われてるんです。でも、こんなにしっかり編んだ糸、自然になんて切れませんよね。」
百合は笑いながら言う。百合の手のひらの上のミサンガを航は取る。
「普通、手首に結ぶものなんです。でも航さんは仕事上、手首にしたら邪魔だと思ったので、足首にどうかなって長めに作りました。男性の足首の太さなんて全くわからないので、多少調整できるように…。」
航の見たミサンガは、不自然なところが何もなく、きれいに編まれた真っ直ぐなミサンガだった。連なるVの字、青から白へのグラデーション。
「幅によって、柄も選べたりするんです。航さんいつも色んな色の服を着て、どの色も似合うから、柄を選べる幅の太いものを作りました。」
航は、編まれた結び目をひとつひとつ見る。
「あんた器用だな。」
「これくらい、誰でもできます。小さい頃、学校で流行ってて作ってたくらいですから。」
「これ…、色に何か意味はあるのか?」
百合は航をちらっと見た後、恥ずかしそうに答えた。
「シャツです。」
「シャツ?」
「航さん、着てました。水色のシャツ。初めて航さんの先輩のお店に行った時…。」
「…あんた、ほんとよく覚えてんな…。」
「白は…百合の花の白で…。」
「おい、こんなんでいいのか?」
「え?」
器用な航は百合の話を聞きながら、ミサンガを結んでいた。
「あ…はい…。長さ、足りましたね…。よかった…。」
「記念だな。」
「記念?…何のですか?」
「付き合った日。」
「あ…。」
航はふいに、百合の頬にキスをした。驚く百合。
「ありがとな。」
「待ってください、私が開けます!」
航は百合の言うことに耳をかたむけない。
「あーこの部屋、本棚ねぇんだよな…。まぁいっか。」
「航さん、待ってください!一緒に開けます!」
百合が駆けつける。航のがらくた箱、百合のおもちゃ箱。航はどんどん中身を出す。言った通り、マンガ本と雑誌が入っていた。本棚、それに代用できるものがない部屋。航はそれらを床に置き、重ねていく。
「うわぁ…これが航さんの…。」
「感心すんな。大したもんじゃねーよ。」
航の物が自分の部屋の中。そう思うだけで百合は嬉しく、目を輝かせていた。
「長い間、押し入れの中に入ってて…、一応ほこりは払ってきた。…おい、聞いてるか?」
「…はい、聞いてます…。」
百合は目が離せない。嬉しそうな百合を見て、航はほっとする。こんな物で、百合の寂しさが少しでも紛らわせるのならと。本当に持ってきてよかったと。
「暇な時、気が向いたら読んでみろ。面白いぞ。」
「いいんですか?」
「安心しろ、エロいのもグロいのもない。」
「エロ…グロ…。」
「次はCDだな。あとは適当に…また押し入れ見てみるか。」
百合はマンガ本を一冊、手に取ってみる。
「航さん?」
「ん?」
「…ありがとう…。」
航は何も言わず、百合の頭をなでた。その後、自分の特等席に座る。百合はマンガ本の横の雑誌を見る。
「この雑誌を見れば、航さんがどういう服を着てたか、わかるんですね。」
「そういう訳じゃねーけど、好きで買ってた。あ…服、古いスニーカーも…。これじゃきりがねぇな。」
「きりがなくていいです。この部屋、航さんでいっぱいにしたい…。」
航に背を向けて座っている百合。百合は悲しい背中をしていた。きっと顔も悲しいのだろうと、航は思った。そして百合は思い出す。
「そうだ、航さんに…。」
百合は引き出しから出す、作ったミサンガ。百合は航の隣に座る。
「これを、航さんに…。」
「なんだ?これ。」
「ミサンガです。お守りです。」
「お守り?」
「はい。自然に切れると願いが叶うって言われてるんです。でも、こんなにしっかり編んだ糸、自然になんて切れませんよね。」
百合は笑いながら言う。百合の手のひらの上のミサンガを航は取る。
「普通、手首に結ぶものなんです。でも航さんは仕事上、手首にしたら邪魔だと思ったので、足首にどうかなって長めに作りました。男性の足首の太さなんて全くわからないので、多少調整できるように…。」
航の見たミサンガは、不自然なところが何もなく、きれいに編まれた真っ直ぐなミサンガだった。連なるVの字、青から白へのグラデーション。
「幅によって、柄も選べたりするんです。航さんいつも色んな色の服を着て、どの色も似合うから、柄を選べる幅の太いものを作りました。」
航は、編まれた結び目をひとつひとつ見る。
「あんた器用だな。」
「これくらい、誰でもできます。小さい頃、学校で流行ってて作ってたくらいですから。」
「これ…、色に何か意味はあるのか?」
百合は航をちらっと見た後、恥ずかしそうに答えた。
「シャツです。」
「シャツ?」
「航さん、着てました。水色のシャツ。初めて航さんの先輩のお店に行った時…。」
「…あんた、ほんとよく覚えてんな…。」
「白は…百合の花の白で…。」
「おい、こんなんでいいのか?」
「え?」
器用な航は百合の話を聞きながら、ミサンガを結んでいた。
「あ…はい…。長さ、足りましたね…。よかった…。」
「記念だな。」
「記念?…何のですか?」
「付き合った日。」
「あ…。」
航はふいに、百合の頬にキスをした。驚く百合。
「ありがとな。」