ビビってません! 〜あなたの笑顔は私の笑顔〜
第58話〜取り返す
「寒くないか?しばらく外にいたから冷えただろ。」
「少し冷えました。」
「風呂入ろう。脱げ。」
「え?」
「露天風呂だよ。テラスにあったの、昼間見なかったのか?」
百合は急いで向かうテラス。ウッドチェアの隣に、檜でできた小さな露天風呂があった。
「ここに、ふたりで…?」
航はゆったり湯に浸かり、百合は隅で体を小さくさせていた。
「おい、何やってんだよ。こっち来い。」
恥ずかしい百合はゆっくり航に近づく。
「温泉浸かりながら星空見るなんて贅沢だな。」
航の隣に移動した百合も星空を眺める。
「…きれい…。」
航が話し出す。
「さっきの話は隠してた訳でも何でもない。隠すようなことでもない。」
「はい…。」
「…何も知らないやつに話すのは、初めてだ…。…また…話したくなったら聞いてくれるか?」
「もちろんです。航さんの大切な人のこと、知りたいです。」
百合は笑顔で答えた。航は百合に抱きつく。湯しぶきが飛ぶ。どきっとする百合。
「あーなんかすげー安心感。あんたは?」
「わ、私は、緊張感…。」
「何でだよ。」
「こ、こんな状況で…。」
「じゃあ後で安心させてやるよ。」
「え?」
星は絶えることなく瞬く。ふたりはずっと見ていた。百合は小さな星が流れるのを見る。
「あ!流れ星!お願い事しなくちゃ!」
「あんたガキかよ…。」
「あ…でも何お願いしよう…。」
「何お願いするんだ?」
「航さんは何かお願い事ありますか?」
「ある。」
「何ですか?」
「あんたを、百合を、守れますように。」
航は満天の星空に向かって願った。嬉しさと湯の熱さ。ぽーっとする百合は航に見惚れる。
「決まったか?お願い事。」
「航さんを守れるくらい…強くなれますように…。」
「ありがたいお願い事だ。」
「私のほうが…。ありがとう航さん…。」
航は百合の顔にパシャっとお湯をかける。
「何するんですか!」
「ぼーっとしてるから。」
「してません!お願い事考えてただけです!」
百合も航にお湯をかけた。加減がわからない百合は航の髪も濡らしてしまう。
「何すんだよ!こいつ…。」
「航さんどこ触ってるんですか!くすぐったいです!」
じゃれあいの露天風呂。
「きれいな星に、きれいな女。酒がなくても酔いそうだ。」
「航さん、お酒飲みたいんですか?私持ってきます。確か日本酒があったはず…。」
航は百合の腕をぐいっと引き寄せる。
「もう酔ってる…。」
ふたりの唇が重なった時、ふたつの小さな星が流れた。願い事は言えなかった。
「航さん…私のぼせそうです…。」
部屋に入るふたり。同じ布団に入り、温泉に浸かった肌と肌を合わせた。
「あんた、体いつもよりあったかい。」
「航さんもですよ?」
「熱でもあるんじゃねーか?」
「温泉に入って、体が暖まったんじゃないですか?大丈夫です。」
百合は笑う。それをじっと航は見た。
「何ですか?航さん。」
「笑うのが当たり前になったな。堂々と泣くのも。初めはビビってただけだったのに…。笑わないで、声出さないで泣いて。今までずっとそう生きてきたのか?」
百合は航から目をそらし、少しだけ困った顔。
「悪い、こんな話したくねぇよな。悪かった。」
航を見上げる百合。
「いえ、大丈夫です。私は今まで、とにかく目立たないようにしてました。それでよかったんです、人が怖かったので。友達と言える友達もいなくて、社会に出てからも、社内で誰かと仲良くなる必要もないって知って、仕事の話だけをして。私はそれでよかったんです。」
「でも家出てあんな静かなとこ住んで、ほんとに寂しくなかったのか?」
「何も、望んでませんでした。」
百合は淡々と話をした。航は百合にも聞こえないくらいの小さな声。
「何だよそれ…ふざけんなよ…。」
そう航は言った後、きつく百合を抱きしめた。
「これからもずっと笑え。泣け。でも泣くのはオレの前だけで泣け。いいな?」
「航さん…。」
「今までの人生を取り返すんだ。」
「取り返す…?」
「だって悔しいだろ。オレが悔しいんだよ…。」
「でも私は、航さんがいてくれたらそれだけで…。取り返すことも、何もいらないです…。」
「そんなこと言うなよ…。」
航は百合をきつくきつく抱きしめる。熱い航を百合は感じた。
「航さん…?」
「何だよ…。」
「ありがとう…。」
「オレはまだ何もしてねぇよ…。」
航に抱きしめられている百合。百合は体を航の肌にこする。熱を感じてもらえるように。
「航さん…?」
「なんだ…?」
「好きです…。」
「…わかってるよ…。」
いつもより熱いキス。
「少し冷えました。」
「風呂入ろう。脱げ。」
「え?」
「露天風呂だよ。テラスにあったの、昼間見なかったのか?」
百合は急いで向かうテラス。ウッドチェアの隣に、檜でできた小さな露天風呂があった。
「ここに、ふたりで…?」
航はゆったり湯に浸かり、百合は隅で体を小さくさせていた。
「おい、何やってんだよ。こっち来い。」
恥ずかしい百合はゆっくり航に近づく。
「温泉浸かりながら星空見るなんて贅沢だな。」
航の隣に移動した百合も星空を眺める。
「…きれい…。」
航が話し出す。
「さっきの話は隠してた訳でも何でもない。隠すようなことでもない。」
「はい…。」
「…何も知らないやつに話すのは、初めてだ…。…また…話したくなったら聞いてくれるか?」
「もちろんです。航さんの大切な人のこと、知りたいです。」
百合は笑顔で答えた。航は百合に抱きつく。湯しぶきが飛ぶ。どきっとする百合。
「あーなんかすげー安心感。あんたは?」
「わ、私は、緊張感…。」
「何でだよ。」
「こ、こんな状況で…。」
「じゃあ後で安心させてやるよ。」
「え?」
星は絶えることなく瞬く。ふたりはずっと見ていた。百合は小さな星が流れるのを見る。
「あ!流れ星!お願い事しなくちゃ!」
「あんたガキかよ…。」
「あ…でも何お願いしよう…。」
「何お願いするんだ?」
「航さんは何かお願い事ありますか?」
「ある。」
「何ですか?」
「あんたを、百合を、守れますように。」
航は満天の星空に向かって願った。嬉しさと湯の熱さ。ぽーっとする百合は航に見惚れる。
「決まったか?お願い事。」
「航さんを守れるくらい…強くなれますように…。」
「ありがたいお願い事だ。」
「私のほうが…。ありがとう航さん…。」
航は百合の顔にパシャっとお湯をかける。
「何するんですか!」
「ぼーっとしてるから。」
「してません!お願い事考えてただけです!」
百合も航にお湯をかけた。加減がわからない百合は航の髪も濡らしてしまう。
「何すんだよ!こいつ…。」
「航さんどこ触ってるんですか!くすぐったいです!」
じゃれあいの露天風呂。
「きれいな星に、きれいな女。酒がなくても酔いそうだ。」
「航さん、お酒飲みたいんですか?私持ってきます。確か日本酒があったはず…。」
航は百合の腕をぐいっと引き寄せる。
「もう酔ってる…。」
ふたりの唇が重なった時、ふたつの小さな星が流れた。願い事は言えなかった。
「航さん…私のぼせそうです…。」
部屋に入るふたり。同じ布団に入り、温泉に浸かった肌と肌を合わせた。
「あんた、体いつもよりあったかい。」
「航さんもですよ?」
「熱でもあるんじゃねーか?」
「温泉に入って、体が暖まったんじゃないですか?大丈夫です。」
百合は笑う。それをじっと航は見た。
「何ですか?航さん。」
「笑うのが当たり前になったな。堂々と泣くのも。初めはビビってただけだったのに…。笑わないで、声出さないで泣いて。今までずっとそう生きてきたのか?」
百合は航から目をそらし、少しだけ困った顔。
「悪い、こんな話したくねぇよな。悪かった。」
航を見上げる百合。
「いえ、大丈夫です。私は今まで、とにかく目立たないようにしてました。それでよかったんです、人が怖かったので。友達と言える友達もいなくて、社会に出てからも、社内で誰かと仲良くなる必要もないって知って、仕事の話だけをして。私はそれでよかったんです。」
「でも家出てあんな静かなとこ住んで、ほんとに寂しくなかったのか?」
「何も、望んでませんでした。」
百合は淡々と話をした。航は百合にも聞こえないくらいの小さな声。
「何だよそれ…ふざけんなよ…。」
そう航は言った後、きつく百合を抱きしめた。
「これからもずっと笑え。泣け。でも泣くのはオレの前だけで泣け。いいな?」
「航さん…。」
「今までの人生を取り返すんだ。」
「取り返す…?」
「だって悔しいだろ。オレが悔しいんだよ…。」
「でも私は、航さんがいてくれたらそれだけで…。取り返すことも、何もいらないです…。」
「そんなこと言うなよ…。」
航は百合をきつくきつく抱きしめる。熱い航を百合は感じた。
「航さん…?」
「何だよ…。」
「ありがとう…。」
「オレはまだ何もしてねぇよ…。」
航に抱きしめられている百合。百合は体を航の肌にこする。熱を感じてもらえるように。
「航さん…?」
「なんだ…?」
「好きです…。」
「…わかってるよ…。」
いつもより熱いキス。