ビビってません! 〜あなたの笑顔は私の笑顔〜
第63話~キス
日は進み、大晦日を迎える。その年、最後の日をふたりで過ごす。百合の部屋。テーブルにはガスコンロと、ふたり用の土鍋。中には、ダシの染みたうどん。熱いうどんを冷ましながら、仲良く食べるふたり。
「うめー…。」
「おいしー…。」
「やっぱりシメはうどんだよなー。」
「航さん。今日、大晦日です。どうしてシメがうどんのお鍋なんですか?」
「食いたいから。」
「年越しそばは食べないんですか?」
「いらない。鍋の次は百合だから。」
黙ってうどんを食べ始める百合。しかしふと思いついたことを冗談で言ってみる。
「じゃあ航さん。年が明けた瞬間、キスしてください。」
「それじゃ地味じゃねーか?どうせならキスじゃなくてセック…。」
「航さん!冗談です!」
年越し鍋を食べ、ふたりは新年を迎える準備をする。テーブルに缶ビールが2本。ふたりはベッドに寄りかかる。百合がさらっと言い出した。
「今年は…色んなことがありました…。…普通の人に、なれた気がします…。」
航は百合の言葉に疑問を抱く。
「普通って何だよ。」
「え?」
「普通の人って何だよ。」
「まともな…人…。」
「普通もまともも、誰が決めたんだよ。誰か決めたのか?決まりでもあんのかよ。」
「それは…。」
何も答えられない百合はうつむいてしまう。
「顔を上げろ。降谷百合。」
百合は恐る恐るゆっくり顔を上げ、そしてゆっくり航を見た。
「あんたはあんただ。ひとりしかいない。オレもオレだ。そうだろ?」
「はい…。」
「もし普通もまとももあるとしても、百合は百合だ。その百合がオレは好きなんだ。わかるか?」
「はい…。」
「それを忘れんな。」
「航さん…?」
「なんだ?」
「私今、何て言ったらいいですか…?」
「…思ったこと、言ってみろ。」
百合の目には涙が浮かんでいた。薄い花びらのような言葉がひらひらこぼれる。
「好き、大好き」
「ずっと一緒にいたい、いてほしい」
「会えてよかった」
「好きになってよかった」
「ずっと航さんがいい」
「航さんが必要…」
涙がどんどん溢れ出す百合。
「それから…、それから…。」
「もういい。」
「もっと…言いたいこと…。」
「オレも同じこと思ってる。全部。だからもういい。」
百合は体を航に向ける。もどかしい気持ちを伝えようと、航に言葉を投げる。こぼれる涙と一緒に。
「いつも言えないの、航さんに。いつもうまく言えないの。だからきっと私の気持ち、全部伝わってないの。すごく好きなのに、伝わってないの。航さんのこと、すごく好きなのに。伝わらないの、航さんに…。」
航は百合を抱きしめた。航の目は、切ない目。
「航さんに…。」
「少し黙れ…。」
航に向かって何かを叫びたい百合。しかし航のぬくもりが百合を包み、やさしさが百合を落ち着かせる。百合を抱きしめながら航は言った。
「オレも同じだ。あんたに、うまく愛情表現ができてない。自分でわかってんのに…。それなのにあんたは、オレの前で笑って泣いて…。でも…。」
「でも…?」
「オレはあんたが思ってる以上に、あんたに惚れてる。それだけは忘れないでくれ。頼む。」
それを聞いた百合は驚き、目を大きくする。涙が止まり、百合にときめきと弾む心。航は百合の肩を掴む。目と目を合わせる。
「これから、言葉が出ない時はキスをしよう。な?」
百合は当たり前かのような笑顔と返事。
「はい!」
ふたりは笑顔で抱き合う。そして何度もキスをした。
「あ!今、何時…?」
百合はスマホを見る。
「…あと少し…。航さん、カウントダウンですよ?」
「そんなもんいーよ。」
「航さん!…5、4、3、2、1…。」
次の瞬間。航は百合にキスをした。冗談で言った、約束のキス。驚く百合は、また目を大きくした。
「おめでとう。」
「おめでとう…ございます…。」
「今年もよろしく。」
「はい…お願いします…。」
納得のいかない顔をする航。
「やっぱりキスは地味だ。派手なことをしよう。正月だし。」
「派手?あ、じゃあ乾杯しましょ?ビールで。」
「ビールは後だ。」
「え?でも、ぬるくなっちゃいます。」
「言っただろ、女抱いた後のほうが酒はうまい。」
「うめー…。」
「おいしー…。」
「やっぱりシメはうどんだよなー。」
「航さん。今日、大晦日です。どうしてシメがうどんのお鍋なんですか?」
「食いたいから。」
「年越しそばは食べないんですか?」
「いらない。鍋の次は百合だから。」
黙ってうどんを食べ始める百合。しかしふと思いついたことを冗談で言ってみる。
「じゃあ航さん。年が明けた瞬間、キスしてください。」
「それじゃ地味じゃねーか?どうせならキスじゃなくてセック…。」
「航さん!冗談です!」
年越し鍋を食べ、ふたりは新年を迎える準備をする。テーブルに缶ビールが2本。ふたりはベッドに寄りかかる。百合がさらっと言い出した。
「今年は…色んなことがありました…。…普通の人に、なれた気がします…。」
航は百合の言葉に疑問を抱く。
「普通って何だよ。」
「え?」
「普通の人って何だよ。」
「まともな…人…。」
「普通もまともも、誰が決めたんだよ。誰か決めたのか?決まりでもあんのかよ。」
「それは…。」
何も答えられない百合はうつむいてしまう。
「顔を上げろ。降谷百合。」
百合は恐る恐るゆっくり顔を上げ、そしてゆっくり航を見た。
「あんたはあんただ。ひとりしかいない。オレもオレだ。そうだろ?」
「はい…。」
「もし普通もまとももあるとしても、百合は百合だ。その百合がオレは好きなんだ。わかるか?」
「はい…。」
「それを忘れんな。」
「航さん…?」
「なんだ?」
「私今、何て言ったらいいですか…?」
「…思ったこと、言ってみろ。」
百合の目には涙が浮かんでいた。薄い花びらのような言葉がひらひらこぼれる。
「好き、大好き」
「ずっと一緒にいたい、いてほしい」
「会えてよかった」
「好きになってよかった」
「ずっと航さんがいい」
「航さんが必要…」
涙がどんどん溢れ出す百合。
「それから…、それから…。」
「もういい。」
「もっと…言いたいこと…。」
「オレも同じこと思ってる。全部。だからもういい。」
百合は体を航に向ける。もどかしい気持ちを伝えようと、航に言葉を投げる。こぼれる涙と一緒に。
「いつも言えないの、航さんに。いつもうまく言えないの。だからきっと私の気持ち、全部伝わってないの。すごく好きなのに、伝わってないの。航さんのこと、すごく好きなのに。伝わらないの、航さんに…。」
航は百合を抱きしめた。航の目は、切ない目。
「航さんに…。」
「少し黙れ…。」
航に向かって何かを叫びたい百合。しかし航のぬくもりが百合を包み、やさしさが百合を落ち着かせる。百合を抱きしめながら航は言った。
「オレも同じだ。あんたに、うまく愛情表現ができてない。自分でわかってんのに…。それなのにあんたは、オレの前で笑って泣いて…。でも…。」
「でも…?」
「オレはあんたが思ってる以上に、あんたに惚れてる。それだけは忘れないでくれ。頼む。」
それを聞いた百合は驚き、目を大きくする。涙が止まり、百合にときめきと弾む心。航は百合の肩を掴む。目と目を合わせる。
「これから、言葉が出ない時はキスをしよう。な?」
百合は当たり前かのような笑顔と返事。
「はい!」
ふたりは笑顔で抱き合う。そして何度もキスをした。
「あ!今、何時…?」
百合はスマホを見る。
「…あと少し…。航さん、カウントダウンですよ?」
「そんなもんいーよ。」
「航さん!…5、4、3、2、1…。」
次の瞬間。航は百合にキスをした。冗談で言った、約束のキス。驚く百合は、また目を大きくした。
「おめでとう。」
「おめでとう…ございます…。」
「今年もよろしく。」
「はい…お願いします…。」
納得のいかない顔をする航。
「やっぱりキスは地味だ。派手なことをしよう。正月だし。」
「派手?あ、じゃあ乾杯しましょ?ビールで。」
「ビールは後だ。」
「え?でも、ぬるくなっちゃいます。」
「言っただろ、女抱いた後のほうが酒はうまい。」