影を拾った太陽ー番外編ー
空き教室に着き、いつものようにお弁当を広げ食べた。
「お、今日はチキンカツか」
「うん、家に材料あったから」
桐ヶ谷くんのお弁当を作り始めて半年。
料理にも少しずつだけど、慣れてきた。
火傷して指をケガすることもなくなったし。
「お前さ、そろそろ名前で呼べよ」
「……へ?」
突然、桐ヶ谷くんが言ってきた。
名前で呼んでいるのに、どうして今更そんなことを?
「知ってんだよ。お前、まだ心の中じゃ”桐ヶ谷くん”なんだろ?」
ドキッ
思わず、お箸を落としてしまった。
え、エスパーか!?
まさか心の中を読まれているとは思わなかった!
「心の中でも名前呼びすりゃあ、口でも慣れんだろ。お前がまだ名前呼び慣れてないのは、一目瞭然だからな」
わ、私ってそんな分かりやすいんだ。
自分で自分の気づかないことって結構あるんだな。
「返事は?」
「わ、わひゃりまひた(分かりました)」
頬を引っ張られながら答えると、桐ヶ谷くん……いや、か、叶斗は手を離してくれた。
あ、心の中だと案外恥ずかしくないかも。
これなら、普通に声に出して『叶斗』って呼べるようになれるのもすぐかも。