金の乙女は笑わない
それから二週間
侍女のエイミーとは少しずつ話をすることも増えてきたらしいが、他の人間とは話さず近づかないらしい。
エイミーは相変わらずの主人びいきで「アイリス様がかわいらしすぎて……はーー侍女やっててよかったーー」っと毎日うっとりしながら報告に来ている。
アランが書類に目を通しながら聞いていると「陛下聞いてますか?」エイミーが突然怒り出す。
「毎日同じような報告だからな……」
「毎日同じじゃないです!」
そう言っても人形のイメージが強すぎて、かわいらしい表情の王女が想像できない。
「ああ。お食事を召し上がっている時のアイリス様が最高なんですよ!!」
エイミーの報告を一緒に聞いていたラルが、「陛下アイリス様を夕食に誘ってみてはいかがですか?」と提案した。
「そうだな。では、今日でも大丈夫か?」
エイミーの顔が煌きだす。
「大丈夫です。最高に美しいアイリス様に仕上げます」
そう言うと一目散に走り出して行った。
*
アイリスは陛下から夕食に誘われ、慌ただしく準備が始まった。
湯浴みをし、髪を梳かし、エイミーが髪をきれいに編みこんでいく。
それが終わると軽く化粧を施し、青の布地に銀糸の刺繍が美しいドレスに着替えた。
準備が終わると「ほう……」っとエイミーの口からため息がもれる。
「アイリス様とっても素敵です!さあ、食事の間へと急ぎましょう」
食事の間の扉が開くと、陛下は椅子に座って待っていた。
頭を下げ部屋の中に入ると、目を見開いている陛下と目が合った。
え……どこか変だったかしら、心配になりエイミーに目を向けると、陛下に親指を立てている。
大丈夫ということかしら?
椅子に座り陛下を見たが、初めて会った時と変わらない冷たい雰囲気を漂わせている。
陛下が従事に合図すると食事が運ばれてきた。
前菜から始まり次々に食事が運ばれ、おいしくいただいていく。
すると、いい匂いにが鼻をくすぐり、胸を高鳴らせていると、メイン料理のお肉が目の前に現れた。
お肉を一口大に切り口に運ぶとジュワーと口の中に肉汁が広がり、ほほが緩む。
思わず頬をおさえフーとため息をつくと、周りの空気がおかしなことになっていることに気づいた。