金の乙女は笑わない
エイミーは何故か興奮していて「くーー」っと言いながら顔を赤くし、壁をドンドンとたたいている。
扉付近で護衛をしている二人の騎士は、頬を染めポカンと口を開いたままで、アランはホークに肉を刺したまま固まっていた。
え……?
何……?
アイリスは何を勘違いしたのか、皆の反応に青くなり人形の表情に戻ってしまう。
「申し訳ございません。私は何かはしたないまねをしましたか?」
「いや、こちらこそ申し訳ない。とても美味しそうに食べていたのでビックリしただけだ、食事を続けよう」
陛下はそう言ったがそれ以上食事を口に運ぶことができず、私は部屋へと逃げ帰って来てしまった。
自室に戻ってきたアイリスは先ほどの自分の行動を反省していた。
「明日また謝りに言ったほうがいいかしら……」
アイリスはバルコニーから外を眺めながら呟いた。
** アランside **
アランはアイリスと食事をするため食事の間へとやって来た。
いつまで待っても来ないアイリスに苛立ちを覚えたころ、アイリスはやってきた。
一言文句を言ってやろうと顔をしかめていたが、部屋へ入ってきたアイリスの美しさに見入って
しまう。
はっと我に返ると、目に飛び込んできたのはエイミーの姿。
どうですかと言わんばかりの、どや顔を向けてくる。
よくやったと頷くと、ぐっと親指を立ててきた。
エイミーにあきれながら従事に合図を送ると、食事が運ばれてきた。エイミーが言う様な王女が見られるのか、アイリスを観察するも変化はない。
しかし肉料理が運ばれてくると、状況が一変する。
肉の匂いに口角が少し上ったかと思うと、人形のような白い肌に赤みがさす。
そして、肉を口に入れた瞬間パーッと花が咲いたように微笑んだ。
その姿を見た瞬間、体中の毛穴から何かが噴出してくるような感覚に襲われる。
何なんだこれは、寒気とは違う振るえ……。
寒くはないのに、体の芯が熱くなっていくようだ。
初めての感覚に戸惑っていると、何を勘違いしたのか謝罪してくるアイリス王女。
何とか「食事を続けよう」と言ったがアイリスが食事を口に運ぶことはなく、逃げるように部屋
へと帰ってしまった。
あっけにとられていると、先ほどのアイリスの表情を思い出してしまう。
ふわっと花が咲いたような笑顔はかわいらしく、天使のように美しいとも思えた。
体の中に隠れていた感情があふれ出し、また体が熱くなっていく。
「っ……くそ」