金の乙女は笑わない
陛下は怒っていると思ったけれど、違ったのかしら?
ガイロのことも許してくれたし
本当は優しい方なのかしら?
首をかしげていると、ガイロがぺろりと指をなめた。
「ガイロこれからもずっと一緒よ。たった一人の私の友達……」
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それから一ヶ月が過ぎ、少しづつアイリスが微笑む回数が増えてきた。
アイリスが散歩に出ると聞くと、偶然をよそおい会いに行き、少しずつ距離を縮めている。
散歩時に手をつなぎエスコートすると、今までは手を添えるだけだったアイリスが、手を握り
返してくれるようになってきた。
目を合わせればエメラルドの瞳が視線を逸らすことなく、見つめ返してくれるようにもなった。
そんなある日
「陛下こんな人質の私にこんなに良くしていただき、ありがとうございます」
アイリスの大きな目に涙がたまっていく。
「ここへ来て一ヶ月が過ぎ、毎日がこんなに楽しいなんて……」
アイリスがかわいらしく見上げてくる。
「俺はアイリスに笑ってもらいたい、ただそれだけだ」
エメラルドの瞳からポロリと涙がこぼれ落ちた。
アランは優しく涙を手でぬぐい、アイリスの頬を両手で包み込むようにして、見つめると鼻にキ
スをした。
「キャッ」
アイリスからかわいらしい悲鳴が上がると、クククッとアランが笑い、子供のように意地悪な顔をする。
「陛下ビックリしました!」
ぷいっと顔を横に向けてしまったアイリスの顔を、もう一度自分に向けさせるため頬を両手で包む。
「陛下また……」
アランと目が合うと海よりも深い青灰色の瞳が、甘く熱を帯びていて言葉を飲み込んでしまう。
「陛下ではない。アランだ」
「アラ……アラン様」
「様もいらないのだが……まあいいか」
甘い空気が二人を包んでいた。