金の乙女は笑わない
アイリスの過去
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「ウンギャー!ウンギャー!」
赤ちゃんの泣き声が響く部屋の扉が開き、侍女長が泣き笑いの顔で飛び出してきた。
「王様!!王女様のお誕生です!!おめでとうございます」
王は侍女長に促され部屋の中に入ると、ベッドに横たわる女性の近くへと歩み寄った。
「マリアよくやった!!元気な王女だ。これは美しい子になりそうだ」
王の反応をうれしそうに見つめているのは、側室であるマリアだ。
王はマリアの腕の中にいた王女を抱き上げ、愛おしそうに見つめた。
「この子の名前はアイリスだ」
嬉しそうに我が子を抱きしめている王を、ベッドの上から見ていると、そこへ司祭長であるジェロー・クロックが祝いにやってきた。
「これは、これは王女様のお誕生おめでとうございます」
ジェローが二人に頭を下げた時、
突然
王に抱かれていた王女アイリスが光りだした。
「な……なんだ、どうしたというのだ!?」
それを見ていた司祭長ジェローは目を見開き叫んだ。
「こ……これは何ということだ!!悪魔……なんと不吉な!!王様。早急に対処する必要があります」
そんな二人のやり取りを見ていた人々が緊迫し、動けづにいると、口を開いたのは王だった。
「どうすれば良いのだジェロー?」
ジェローは顎に手を当てて「うむ」と低い声を出し考え込んでから、重い口を開いた。
「王女を悪魔の元へ返すのが宜しいでしょうな」
意味が分からないと、マリアが口を挟む。
「それはどういうことですか?」
まだ薄っすらと光っている我が子を王から受け取り、ギュっと抱きしめるマリア。
「今すぐ王女を殺し埋葬するのです」
「そんな……そんなこと出来ません!!」
「マリア様。何かあってからでは遅いのです!!」
ジェローが準備にとりかかろうと人々に指示をとばしている。
「お願いです!命だけはとらないで!!」
マリアはぽろぽろと涙をこぼしながら懇願し、王はマリアの様子を見つめ、考えていた。
「ジェローよ、少し様子を見てからでも良いのではないか?」
「しかし王様、先ほども申し上げましたが、何かあってからでは遅いのですよ!」
「うむ、何も起こらぬよう皆で王女を守るのじゃ。良いな」
「御意!!」
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アイリスが生まれてから一ヶ月が過ぎ、特に何も起こらなかったため、皆が安堵し始めたころ事件は起こった。
「王様!大変です。噴水の水が……」
一人の兵士が王のいる間に転がり込んで来た。
腰を抜かし床に座り込んでいる兵士をおいて、王は城の庭にある噴水は行くと、血のように赤く染まった噴水が目に入る。
「何だ、これは!!」
城内の者たちは青くなり、何かをささやいている。
「やっぱりあれか?」
「悪魔……王女は悪魔の子」
「いやー!!怖いわ」
城で働く者たちが集まり、騒ぎ出す。
「静かにするのだ!慌てるでない。ジェローを呼べ!!」
すぐに司祭長のジェローが呼ばれた。
「これは……!王様、すぐに聖水による浄化を行います」
ジェローは聖水を用意し何やら呪文を唱えると噴水に流し込む、すると真っ赤だった噴水の水が元に戻り、人々は胸をなでおろした。