金の乙女は笑わない
「アイリス少し休まないと、お前が倒れてしまうぞ」
心配するアランだったが、アイリスは首を左右に振り部屋から出ようとしない。
仕方なくアランはアイリスを引き寄せ椅子に座ると、膝の上に乗せ横抱きにした。
「キャーー!!アラン様何をなさるのですか?」
「こうでもしないと休まないだろう?少しでいいから目をつぶって寝ろ」
アイリスがそっと顔を上げると、青灰色のきれいな瞳と目が合ってしまう。カーっと顔が熱くな
っていく感覚がして、顔を隠そうと下を向こうとした所で、アランが顎をクイッと上げてしまっ
た。
「アラン様お願いです。手を離してください、でないと私……胸がギュっとして苦しくて、どう
したら良いのか……」
アイリスは瞳を潤ませながら、手を離すように訴えた。
アランは「ふっ」と微笑み目を細め口角を上げると、意地悪をする子供の様な顔をする。
「そんな顔をするな、かわいすぎて食べてしまうぞ」
「私を食べるんですか?」
意味が分からないと、首をかしげるアイリスのかわいらしい姿にたまらなくなり、自分の唇でアイリスの唇をふさごうとした……。そこでアランは、はっと我に返りアイリスをギュっと抱きしめた。
「さすがに王が寝ている横ではまずいよな……」
アランがぼそりと呟いたがアイリスの耳には届いていなかった。
「ともかく寝ろ」
言葉の強さとは裏腹に、頭をやさしくなでてくれる。
アランの優しい手に癒され、疲れた体から力が抜けていく。
頭をアラン様の胸につけると、トクトクと鳴る心臓の音に安心し眠りに落ちた。