金の乙女は笑わない
アイリスはチュンチュンと鳴く鳥の声で目を覚ますと、目の前にアランの寝顔があり、驚きで声をあげないよう両手で口を押さえた。
昨日アラン様に抱きかかえられたまま寝てしまったんだわ。
それにしても、なんて美しいお顔なのかしら。
朝日を浴びて更に美しく見える。
アイリスはアランの頬をそっとなでると、きれいな形をした唇が目に入ってくる。
思わず唇を指でなぞると、チュッとキスをしてしまった。
アイリスが唇を離そうとした所で、頭をぐっと押さえつけられ唇を離すことが出来なくなってしまう。
「ん……っ、んん……」
ビックリしてもがいていると「ずいぶんと、うれしい起こし方をしてくれるな」アランがうれしそうに笑っている。
「ご……ごめんなさい。起こしてしまいましたか?」
両手で口を押さえ、恥ずかしさにプルプルと震えていると、王の寝ていたベットからカタンと音
が聞こえたため急いでベッドに駆け寄ると、トロイア王が目をゆっくりと開けた。
「お父様!大丈夫ですか?」
アイリスが王に問いかけ手をとると、王はぼーっと天井を見ていたが、ゆっくりとアイリスを見つめた。
「そなたは?」
「お父様、私はアイリスです」
「アイリス……アイリスか?美しくなった。マリアと同じ瞳の色だ」
王はアイリスの頬に優しく触れた。
アランはしばらく二人を見守っていたが、今まで起きたことを説明するため、口を挟んだ。
説明が終わると、王はアランに感謝の言葉を述べ、自分の王としての未熟さを嘆いた。
「まさかそんなことが起こっていたとは……本当に申し分けなかった。私は王失格だな」
「お父様すべて、王妃と司祭長のしたこと、そして薬のせいなのです」
涙を流す王に皆が沈黙していると、医師から今日のところは、このへんで休むように言われ、部
屋から出ることにした。