となりに座らないで！～優しいバレンタイン～
　今夜だけは、無理矢理仕事を終わられマンションへと戻る。


　玄関のドアを開けた途端、パタパタとスリッパの音にほっとする。同時に、嬉しすぎて胸が高鳴った。週に三日以上も友里が寝た後に帰宅となってしまっているのだ。自分の勝手とは分かっているが、こうやって出迎えてもられる事が幸せだと思う……


　友里の用意してくれた夕食を二人で囲む。

　友里はハウスキーパーを断りたいと言ってきた。別に俺はどちらでもいいが、なぜ友里がこだわるのかわからない。


　「だって、自分の家だから……」


　友里のさりげない一言に、俺は絶句した。


　この家が、自分の家という意味で良いのだろうか？


　まだ、三週間で不自由な事もあると思うが、自分の家だと思ってくれている。
　ずーっと、一緒に暮らしてくれる。俺には、そんな風に胸の中へ響いてきた。


　我に返ると、友里が少し寂しそうに食事を手につける姿が目に入った。
　

「友里の家なんだから、友里の好きにればいいさ。明日に断っておくよ」

　友里に気持ちは通じただろうか？
　それより、俺の浮きだった気持ちが優先し、自然と顔が緩んだ。

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