となりに座らないで!~優しいバレンタイン~
「嫌になったなら別れるしかないわね。価値観てそういう事かもよ?」


 一也を嫌い?
 確かに、怒った。でも、嫌いになんてなれない……
 別れる? 嫌だよ~


 喧嘩して、一也の存在がこんなに大きい事を知った……
 まだ、出会って、一緒に暮らして一か月しか経っていない…… 相手の事なんて全部知らない…… 一緒にいるのだから、ぶつかって当たり前なのかもしれない……

 社長の言っていた、かかわればかかわるほど悩みが多くなる…… 私は今日一日、悲しい目をしていたんだ。悲しかったんだ……



「篠山さん、カクテルどうぞー」

 加藤君が、綺麗なオレンジ色のグラスを持って来て、私の前に置いた。


「ありがとう……」


 グラスを口に付ける。
 飲みやすい甘さが口に広がる。


 チラリと、一也の方に目を向けた。
 スーツ姿に眼鏡をかけた一也は、整えた髪を乱す事もなく、無表情に社長らの話に相槌を打っている。

 一也は色々な顔を持っている。
 きっと、どんな姿にもに意味を持っているのだろう……
 でも、一也は全ての顔を私に見せてくれている気がする……


 カクテルを一口飲む。
 段々と、顔が熱くなってきた。酔いが回ってきたのだろうか?


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