世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
「じゃあせめて掃除は俺担当にしよ」
そんな提案をしてきた。
「だ、だめ…っ!私がやるの!」
さすがにだめだ。
それじゃ私がお世話になりっぱなしで、何もお礼を返せない。
私はルールが書かれた紙に必死に手を伸ばして、詩優は私に取られないように遠ざける。
どうしても奪いたくて更に近づき、手を伸ばしたら、詩優は顔を近づけてきて……
唇に熱が伝わった。
目の前には整った顔のドアップ。
何が起こったのかすぐに理解できなかった私は数回瞬きを繰り返して。現状が理解できた時に、手に握っていたものを──さっき詩優から奪ったばかりの油性ペンをするりと目の前の彼に取られた。
それからすぐに唇を離して、詩優はにやりと口角を上げて。
今がチャンスだと言わんばかりにルールを書き直す。今、私の手から奪った油性ペンを使って。
さっきのキスのせいで熱くなる体温。
ドキドキとうるさい心臓。
…詩優は本当にずるい人だ。