世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
目には涙が溜まる。
もし、もし……宮園さんに詩優を傷つけられたら……と思うと怖くてたまらない。
小刻みに体が震えだす。
「ひめちゃん、詩優はあんなやつに負けないよ。世界No.1の暴走族の総長だから。
むしろ心配なのは宮園の方」
倫也はそう言ってベッドの端の方にゆっくりと腰を下ろした。
「詩優がさ、宮園を見た瞬間にブチ切れて止まらなくなったんだ。さすがに宮園の命がやばいから俺らは止めたんだけど……それでも止まらないくらい詩優は理性を失ってて、ね。
今すごい危険な状況なんだよ、宮園が」
それから倫也はスマホをポケットから取り出す。
指でスマホを操作してから、聞こえてきたのは電話の呼出音。
「もう俺らでも止められないから、ひめちゃんが頼みの綱なんだ。
ひめちゃんの声なら詩優に届くはずだから、ね」
倫也はそう言って優しく笑ったあと、スマホを自分の耳元に当てた。それからすぐに聞こえてきたのは竜二さんの声。
よく聞き取れなかったけど、きっとそう。
「帰ってこいって、伝えてあげて?花莉が言えば絶対すぐ戻ってくるから」
ぽんぽん、と京子に頭を撫でられた。
数秒してから、「よろしく、ひめちゃん」とすぐ近くに置かれたスマホ。