世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
私は大きく息を吸った。
「……詩優…あのね、さっきはごめんなさい…。冬樹くんに会いたいっていうのは嘘なの。詩優に構って欲しかったから…冬樹くんって言ったの。本当は詩優が一番好きなの……
離れていかないで……早く帰ってきて……お願い…」
体が熱いおかげで思っていたことを全て言うことができた。
あとは、詩優に届くかどうか……。
電話越しには何も聞こえてこない。
ただの沈黙。
スマホはスピーカーモードだったけど、一応耳元に当てた。よく聞こえるように。
それでも数秒間沈黙は続き……。
それがすごく怖くてもう一度声を出そうとしたら
『…すぐ帰る』
ぽつり、と小さく聞こえてきたのは彼の声。
大好きな、詩優の。
「…待ってる」
『あぁ。待ってて』
優しい声が聞こえてきたから、安心して……。すぐに瞼がおりてくる。
まだ寝たくないのに……
詩優の声を聞いていたいのに……
ゆっくり目を瞑った。