世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
大人用のマスクは俺にはぴったりだった。
花莉は俺を見つめて
「どうせ私は子どもだもん」
ぷくっと頬を膨らませてそっぽを向く。
どうやら子ども用マスクをしていることを気にしているのだろう。
可愛いのに。
「花莉、おいで」
もう一度呼んでみるがこっちを見てくれない。
だったら……
「退院手続きをお願いします」
俺は花莉を無視して退院手続きを進めた。
こうしたのは、熱を出した花莉が寂しがり屋だとわかっているから。前に花莉が熱を出した時に甘えてきたのを覚えている。
だから今回だって放っておけば、俺のところに来てくれる……はず。
なんて思っていたら、彼女は俺の隣の椅子にちょこんと腰を下ろした。
それから、ぎゅっと腕にくっついてきて。
密着状態。
ちらりと花莉を見ると、目を合わせてまたぷいっとそっぽを向かれた。
……何この可愛い生き物。
それからその後は花莉がくっついたまま退院手続きをして、薬を処方してもらった。