世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
「乃愛がシユーに近づきそうになったら電話するから、ちっこい雷龍ちゃんはすぐにその場を離れてね~」
空木はそう言って私にスマホを返してくれた。
「もうちっこい雷龍ちゃんは帰るんでしょ。乃愛には適当に言っとくから、早くシユーのとこ行きな~」
ひらひらと手を振ってくる空木。
…な、なんか、つかみどころのない人だ。さらっとしすぎてて少しびっくり。
「じ、じゃあ、ね」
私はそう言って、くるりと背を向ける。
小走りで帰ろうとしたら、
「乃愛助けてくれてありがとー」
と背後から聞こえてきた。
立ち止まって振り向くと、
「乃愛は『運命の王子様』とかイタイこと言うけどいいやつなんだ~。
あいつには悪いけど、明日から頑張ろーねー」
優しい表情でそう言った空木。
…よほど空木(姉)さんのことが大切なんだろう。