世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
そっとその場にしゃがんで、割れてしまったマグカップに触れる。
…おそろいだから、大切にしてたんだよ。
詩優は私みたいに思ってないかもしれないけど、私はおそろいの物が増えるたびに嬉しかったんだよ。
私は……詩優とおそろいのマグカップで一緒に飲み物を飲む時が幸せだったんだよ。
思い出が壊れてしまったことがなんだかすごく悲しくて、マグカップの上にぽたりと涙がこぼれ落ちた。
「…なんで、詩優は冬樹くんのこと何も聞かないでそういうことするの」
呟くように言った言葉。
「…ごめ────────────」
詩優の声が上から降ってきて、私は立ち上がってこの場を逃げ出した。
ただ、悲しかったから。
「花莉!!」
「花!!!」
詩優と冬樹くんの声が後ろから聞こえてきたけど、私は止まることなく自分の部屋へと走って閉じこもるようにドア閉めた。