世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
花莉と言い合いをする榊。
…どうやらこれは榊が『泊めて』って頼んだわけではねぇみてぇだ。
だとしたら、榊には花莉と早く離れて帰ってもらわねぇと。
『お、お願い!詩優っ』
口を開こうとしたら花莉は必死に頼み込んでくる。
…そんなに榊が心配なのか?
『冬樹くんびしょ濡れなの…!!風邪ひいちゃうよ…っ』
「馬鹿はひかねぇから大丈夫だろ」
『冬樹くんは馬鹿じゃないもん!!!』
軽く笑うと全力で否定してくる花莉。
『花、このままだと花が風邪ひくから!!俺のことは本当にもういいから、早く帰りな』
榊の心配する声。
『…お願い、詩優。あとでなんでも、たくさん言うこと聞くから……』
花莉はずりぃと思う。
“お願い”とか言ってきて。それで俺がなんでも言うこと聞くとでも思ってのか?、って思うくらいだ。
聞こえてくるのはさっきよりも強くなった雨音。
…榊の言うように、これじゃ花莉が風邪ひく。
彼女は譲る気など微塵もねぇんだろう。俺が嫌だって言っても無理矢理連れてきそうだし……。