世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
花莉が手を伸ばしてももう遅く。
激しい音を立てて割れてしまった。
落ちて割れてしまったものは、まさかの…。
ここに引っ越す前に家具屋で買った、花莉の、白猫のマグカップ。
それはもう破片が飛び散ってしまっていて、修復不可能。
花莉はそっとしゃがみこんで、割れてしまったマグカップに触れる。
その手はわずかに震えていて、ぽたりとこぼれ落ちた彼女の涙。
「…なんで、詩優は冬樹くんのこと何も聞かないでそういうことするの」
悲しそうな花莉の声が耳に届く。
「…ごめ───────────」
謝ろうと声を出した時、花莉は立ち上がってこの場を走り去って行く。
「花莉!!」
「花!!!」
俺と榊は花莉を呼ぶが、一切振り返らずに彼女はこの場を去った。
…玄関の音はしないから、ここの部屋を出たわけではなさそう。
たぶん、自分の部屋へと行ってしまったんだ。