世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
詩優が作ったお粥を食べるのは今回で2回目。
初めて食べたのは私がインフルエンザになって、それでも退院した時。
京子に教えてもらいながら詩優が一緒に作ったみたいだけど、すごく美味しかった。
まさかまた食べられるなんて。
すごく嬉しい。
…お茶碗持ってこよう。
私はコンロに火をつけたまま食器棚へと向かい、お茶碗とスプーンを取り出して、思わず手を止めた。
詩優の犬のマグカップが目に入ったから。
以前は柄違いのマグカップを並べてしまっておいたのに、今はひとつだけ。
今朝のことを思い出すだけで目に涙が溜まる。
泣いたってマグカップが元に戻るわけでもないのに…。
パジャマの袖で目元を拭って、キッチンへと向かうとちょうどお粥が温まっていた。
火を消して、お粥をお茶碗によそって。
それを持って椅子に座る。
「…いただきます」
ここにいない詩優にそう言って、お粥をスプーンですくう。