世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
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「夜瀬くん、少しいいかしら」
病室を出る準備をしていたところで花莉の母親に呼ばれた。
かなり真剣な表情をしていたから、少し緊張が走る。
「はい」
そう返事をして、「ちょっと行ってくるな」と花莉に声をかけて病室を出ようとしたら…
くいっと袖を引っ張られた。
「…行っちゃうの……?」
花莉は涙目で。
その瞳は不安げに揺らいでいた。
「すぐ戻るから」
と伝えてもなかなか袖を離してくれない。
…どうするか。
「花莉、お母さんに少しだけ夜瀬くんかして?」
花莉の母親がそう言うと、掴んでいた袖をゆっくり離してくれた。
離してくれたのはいいけど、花莉は下を向いてなんだか寂しそうにする。
「いい子にしてたらご褒美あげるから」
花莉をベッドの上に座らせて、わしゃわしゃと頭を撫でてから病室をあとにした。