世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
残りの時間、動けないでいてね
なんて思いながら早足でリビングに戻ると。
パチっとすぐに詩優と目が合った。
ソファに座ったまま、私を見て驚いている。
…いい感じだ。
このまま作戦がうまくいきますように。
ゆっくり足を進めて、ソファに座る詩優の隣へ。
「お待たせしました…」
また肩を密着させて座った私。
なんだか緊張しすぎて、「へへっ」とぎこちない笑い方になってしまう。
いつまでもこっちを見てくれない詩優。
また、びっくりして固まってるのかもしれない。
…これでいい。
写真を撮られないで安心してそばにいられるから。
私は寄りかかって、彼の肩に自分の頭を乗せた。
鼻腔をくすぐるいい匂い。
詩優はいつでもいい匂いがする。
温かいし、30分もすれば眠くなりそうだなぁ。
そんな呑気なことを思ったあとに、私は口を開く。
「この間、お粥作ってくれてありがとう。すごく美味しかったよ。
あと布団も、かけてくれてありがとう」
このお礼はまだ言っていなかったから。
言っておかないと、って思った。
声を出しても詩優は動かなくて、彼の肩に頭を乗せながらゆっくり目を瞑る。