世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
花莉の母親のあとについて行って、ロビーに到着。
誰一人いなくてすげぇ静かだった。
くるりと俺に向き直る母親に、俺はまっすぐ目を合わせる。
「夜瀬くん、花莉は私が連れて帰るわ」
何となくそう言われるような気はしていた。
花莉を守れなかったのは俺なんだ。それに、俺が暴走族だということも伝えたから……こんな危ねぇやつに大事な娘を預けたいなんて思わねぇだろう。
そう言われるのは仕方ねぇこと。
だけど……、
“離したくねぇ”とか思ってる俺はかなり最低だ。
なんの返事もできなくて、ただぎゅっと拳を強く握った。
「…っていうのは言いたかっただけよ。
花莉をもう少し夜瀬くんに頼んでもいいかしら?もちろん無理にとは言わないわ」
次に俺の耳に届いたのは優しい声。
目の前の女性の。
まさかの言葉にただ瞬きを繰り返した。
俺は頭をフル回転させて数秒後に理解。
「本当に…俺でいいんですか?」
思わずそう聞いてしまった。
守れなかった俺に、大事な一人娘を頼んだんだから……。本当に頼んでいいのか、って思ってしまった。