世界No.1の総長と一輪の花Ⅲ
詩優の泣いているところを私が実際に見たんだとしたら、ちゃんと覚えていないのはもったいない。
私は弱いところばかりの見せているのに、彼は私に弱みをほとんど見せてくれないから…。
そんなのは不公平。
私だって詩優のいろんなところを知って、もっと支えたい。
「…あれは……忘れてほしい」
少し弱々しい詩優の声が耳に届いて、彼のほうに目を向けると……
彼の人差し指が私の頬にぷにっと触れた。
「!?」
また騙され!?、と思ったが彼は
「ほんとにあれは忘れろよ」
と言う。
“忘れろよ”
ということは……それが本当だということだよね?
やっぱりあれは、私の見間違いじゃなかったんだ。
もっとく見ておけばよかった、と後悔しても遅い。
「詩優はいつでも泣いていいからね…!!私が抱きしめて慰めるから…!!」
お任せください!、と自分の胸を叩けば彼は私をまっすぐ見つめて。
「今、抱きしめて」
と言ってきた。