ワケあり男子
「泣いてないです。優しいですね」



つい、笑顔でそう返してしまった。



如月さんは、律くんに対しては引いた方がいい結果が得られるようなことを言っていたけど、私にはそういう駆け引きができない。


この後どんな塩対応をされるかわからない。


それでも、今思った気持ちを伝えたい…ただ、それだけ。



「別に優しくなんかないけどな。冷たいって言われること多いし」



フイと顔を背けてしまう。



ああ…ちょっと近づけたと思ったのに。



「今朝は冷たい人には見えなかった…です。電車で助けてくれましたよね、ありがとうございました」



立ち上がってぺこりと頭を下げる。



「え!?ああ…今朝の…」



思い出してくれたんだ?



顔を上げると、やっと視線が合った。



わあっ…。


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