あなただけ見つめてる

これ以上聞く気はないので
部屋に戻ってしまおうと思ったのだが

「何?離してよ」

「離すか」

大我に耳打ちをした使用人

「出せ」

はい?

「俺に渡す用のチョコ用意してあるんだろ」

あるけど、出したくない

「出さねぇなら、カバン事あさるぞ」

「それだけはやめてよ」

しぶしぶカバンから出した
大我用のチョコ

「俺以外に作るな」

「何言って」

「こいつらにも、作らなくていい」

「ば、バカ!」

「あらあら。何事ですか?」

「お母さん!」

「お袋」

「もう、春果もそんな年ごろなのね?」

え?

「でも、あなた達は義理でも兄妹。
恋愛にまで、発展しないで頂戴」

「・・・っ」

分かってたよ。
そうやって言ってくるの
分かってたから、渡したくなかった

だから毎年のようにこっそり部屋に置いておきたかった

大我の腕を振り払って
部屋に閉じこもったあたしに

「春果!」

って呼んだお母さんの声も聴きたくなんてなかった

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