あなただけ見つめてる

「隆二なんて、大っ嫌いっ」

「ちっ」

「きゃあ!」

腕を思いっきり引っ張って歩いていく隆二の後ろ姿は
恐ろしいくらいに怒っていて

時々、躓きそうになっても、容赦なく
進んでいくこの姿が、大分昔の隆二の姿と被って見えてしまった

バンッ
助手席に、放り込まれるように入れられてしまったあたしと
運転席に普通に乗った隆二

「で?1週間、どこに居やがった」

まだ、1週間だったんだ

「どこでも、いいじゃない」

「てめぇ」

「あたしがいなければ、
"あの女の人"と一緒に居れたんじゃないの?」

「あ?何ほざいて」

「隆二には、分かんないよ。
何もかもを持ってる。隆二には」

車を降りようとすると
エンジンを掛けられ、終いにはドアもカギを掛けられてしまった

「何もかもね。
なら、唯一もってないもの教えてやるよ。」

唯一もってないもの?
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