あなただけ見つめてる
幼なじみ

「え?」

お父さん。今なんて言ったの?

「悪いな。紗菜。
お父さんな。海外に赴任することになった」

海外・・・か
遠くなっちゃうな・・・

「お前も支度をしておいてくれ」

あたしも、行かなくちゃ、ダメなの?


「本当はな。お前が高校を出るまでは、と思っていたんだがな。
思ったよりも早く出てしまって申し訳ない。紗菜」

・・・っ

「母さんもいない。お前を1人ここに置いていくわけにはいかない」

分かってる。
分かってるよっ

「支度しちゃうねっ」

「紗菜。すまない。
学校まで辞めさせる羽目になってしまって」

「仕方がないよ。」

お母さんがいればっていうのが
お父さんの口癖になったのはいつからだろう?

部屋に戻りながら
泣きそうになるのをこらえる

部屋に戻って、掛けてある制服をみる
「この制服ともお別れなんだ・・・」

海外に行けば、いつ帰ってこれるかなんて分からない
もしかしたら、もう、ずっと帰ってこない可能性だってある

「お父さん」

「何だい?」

「学校にはいつ、言えばいい?」

「紗菜に任せるよ。
早ければ早い方がいいかもしれない」

早い方がいい・・・か

「分かった。明日、言ってくる」

「いいのかい?」

「うん。いいの。明日言いに行って
行く日に伝えてもらうようにする」

「そうか」

「うん」

結城には、なんて言おう・・・
きっと、何とも思わないよね?
結城、あたしには冷たいもん。

また、部屋に戻れば悲しくなってしまう

「告白する前に失恋してたもんなぁ」

結城には、いつも周りに女の子がいる。
あたしは、いつもそれを見てヤキモチを焼いてた

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