あなただけ見つめてる

落書き帳に絵を描き始めた咲姫。

紗菜がいれば、朝ごはんも手の込んだものを作ってくれるのに
俺は、作ってやれない。
いつも、朝はパンとジャム。咲姫にはスープとジュース。

「咲姫。朝飯だぞ」

「はーい」

手を洗って、いつもの位置に座る
いつものご飯を見て
少し悲しそうな顔をした咲姫。

「咲姫?」

「ママは?ママはいつ、かえってくるの?」

この質問は何度目だろう。
紗菜が病院に行った次の日からだったか。

「もう少しだよ」

「もうすこしってなぁにっ
ママは、さきがきらいなんだ。だからかえってこないんだ」

紗菜が?咲姫を嫌い?
そんなことない。

「咲姫。何で、ママが咲姫を嫌いになる」

「だって、さきがいてほしいときに、ママはいないもん。
さきがきらいだから、ママはかえってこないんだもん」

咲姫は、寂しんだろう。
まだ、幼い咲姫を置いて病院に行くのをためらった紗菜を思いだす

「咲姫。なら、ママの所に行くか?」

「ママ?」

「本当にママが咲姫を嫌いかどうか。
咲姫が確かめればいい」

「うん?」

「それでも、ママが咲姫を嫌うことはない。
それはもちろん、パパだって、同じだ」

「パパも?」

「あぁ」
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