あなただけ見つめてる

紗菜が、頼んでいたのか?
ベッドに咲姫を寝かせるとすぐに分娩室に

「ゆ、うき?」

「紗菜。大丈夫だ。俺がいる。
咲姫の時だって俺がいただろ?」

「う、ん」

汗ダクダクの紗菜を見ると心苦しい

「ゆ、き。お願い。手を、握って?」

「あぁ。勿論」

紗菜が握って欲しいなら、いくらでも握る。
抱きしめて欲しいというなら、いくらでも抱きしめてやる。

紗菜の手を握った時、こんな小さな体で、子供を産んでくれて
抱きしめてくれる紗菜には、感謝しかない

何時間たっただろう。
時々いきんでは、息を吸い込んだりしながらを繰り返し

「フギャー」
「オギャァ」


「生まれましたよ。元気な”双子”の女の子ですよ」

は?
双子?

「ありがとう。紗菜。子供たちを産んでくれて」

「ううん。あたしこそ、ありがとう。結城」

処置も終わって病室に帰って来た紗菜と俺
それでも、まだ咲姫は当然寝ていて

「咲姫も連れてきてくれてありがとう」

「あぁ。1人には出来ないからな」

「そうだね」

と言ってくれた紗菜。
小さな赤ん坊は、NICUへ入った。
標準よりも少ないそうだ。
確かに、予定よりも8日も早かったんだ。

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