もっと泣かせて愛したい。【書籍タイトル:一途なイケメン幼なじみは、愛が重すぎる溺愛男子でした。】
ハヅキがグイッと私に手を伸ばして引き寄せる。
「っわ、」
中途半端に椅子からお尻が浮き上がった状態のまま、ハヅキに後ろから抱きしめられている。
「何回言ってもわからないみたいだけど、俺ヤサシーから何回でも言ってあげるよ」
ハヅキの声が耳元で聞こえて、背筋がゾクツとした。
「これ、俺の」
京星くんの眉間にグッと皺が寄る。
「…紗英はモノじゃねーよ」
「…はは、偽善者?
ほんっと吐き気がするよキョーセーくん。キミには、昔から」
ハヅキの腕が私を解放した。
そのまま席から立ちあがって、歩いていこうとする。
「ちょっ、どっか行くの?」
「メンドいからサボる」
「メンドい、って…自分の名前は書いたの?」
「どーでもいいよ別に」
ハヅキが近づいてきて、グイッと私に綺麗な顔を近づける。
のぞきこむ瞳の近さに“いつか”を思い出して、心臓が揺れた。
「俺、さぁちゃん以外はどーだっていいんだよ、別に」