もっと泣かせて愛したい。【書籍タイトル:一途なイケメン幼なじみは、愛が重すぎる溺愛男子でした。】
――あの熱を出した日。あの日の帰り道。
なぜか私と一緒に早退したハヅキと家まで歩いた。学校から家までは歩いて15分の距離…なんだけど、歩き慣れたその距離が、辛くて辛くて。
「もうダメ…」
道端でうずくまった私にあわせて、ハヅキもしゃがみこんで。
「…ん」
私に背中を向けてきた。
「え…?」
「…のれば?」
「え…い、いいよっ。重いし」
「いいからのれって」
いつになく強い口調のハヅキにおされて、おそるおそる背中にのっかる。
ハヅキが立ち上がる。落ちないようにしがみついた。
…華奢だと思ってたけど、ハヅキの背中は思ったより広かった。
サラサラとした黒髪と、形のいい耳がすぐそこにある。
「…重」
しばらく黙って歩いていたハヅキがボソッと言った。
「や、やっぱり!やっぱり降り…」
「降りんな」
ハヅキが私を担ぎなおす。
「…さぁちゃんって、意外に小さいんだね」
「そ、そう?」
「うん」
ハヅキは…意外と、大きいんだね。