偽善はいらない。助けてよ
それは小学五年生の夏から付き合い始めた彼氏、《芦屋 奏(あしや かなた)》と話す事。

少し離れた別の学校のヤンチャな同い歳の男の子。

地域のイベントで何度も会ううちにお互いに好意を持つようになり、晴れて小学五年生の夏祭りの日、2人は付き合う事になった。

あれから1年、なかなか会えないのもあり2人は頻繁に通話をしていた。

……

『もう少しで付き合って1年だな~』

「そうだね、記念にどっか遊びに行きたいね」

『どっちかの親に頼んで隣町まで送ってって貰ってさ、陽の好きなもの沢山買ってやるよ!記念にお揃いの物とかさ!』

「そう…だね。」

『…陽、最近ずっと元気ないけどどうした?それにそっちの学校の友達から陽がよく傷作って学校来るって聞いたんだけど家で何か』

「なんでもないよ!怪我したのは家の階段から落ちちゃってさ~ほら、うちの階段急でしょ?足元よく見てなくてさ」

『そっか…まぁそれなら別にいいんだけど…あんま傷作んなよ、女の子は傷残ったらあれだろ』

「うん、心配かけてごめんね!あ、お母さんにお風呂入ってって言われたから電話切るね!バイバイ!」

『え、うん、分かった、バイバイ。』


……


「ごめんね、奏。でも言える訳ないじゃん…」

奏との通話を無理矢理終わらせ、1人座り込み、恋人に嘘をついてしまった事、現状を変えられない自分の無力さに涙を流した。


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