ホームズの子孫には敵わない
「ワトソン先生!!」

私はワトソン先生に声をかけるが、ワトソン先生は気を失ったまま起きる気配はない。ワトソン先生を抱き上げて逃げることはできない。でも、ワトソン先生を置いていくこともできない……。

「……一緒に来てくれるでしょ?」

フードで顔を隠した人物は、まだ幼さの残る顔をした男性だった。無邪気に笑いながら、私の首に何かを突き付ける。

冷たいそれがナイフだと、一瞬でわかった。私の体は小刻みに震え出し、今にも涙があふれそうになる。

「そんなに怖がらないでよ。大人しくしてくれれば何にもしないからさ」

震える私を見て、男性は私が抵抗しないと判断したみたいだ。私にナイフを突き付けたまま背後に回る。

その刹那、目の前が真っ暗になった。男性が私の目に布を巻き付け、視覚を奪ったんだ。私は無理やり立ち上がらされ、男性に誘導されていく。

少し歩いたところに車を置いていたらしい。私は後部座席に寝かされ、手足を結束バンドで拘束されて口にもガムテープが貼られてしまう。
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