ホームズの子孫には敵わない
相変わらず震え続ける私に、男性が優しく触れる。でも、私にとっては恐怖でしかない。私の口から声にならない悲鳴が漏れた。

「そこまで拒絶されると傷つくんだけど……。まあいいや、大人しくしててね?暴れたらナイフでブスリだから」

低い声で言われ、私はコクリと何度も頷く。後部座席のドアが閉まり、男性が車を動かし始めた。

ホームズさん、ワトソン先生、必ず助けて!

私は体を震わせながらそう思った。



男性はやはり、モリアーティの仲間だったみたいだ。

何時間かわからないけど車に揺られ、気が付けば私は窓のない室内に連れて行かれていた。椅子に座らされ、目隠しと口に貼られたテープを外される。

「……はい。わかりました」

私を誘拐した男性は、電話がかかってきたためスマホを手にする。たぶん、モリアーティ本人だろう。

電話を切った後、男性はナイフを再び私に突き付ける。

「あの探偵からもらったものはある?嘘を言ったら殺すよ?」
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